※ネタバレを含みますので、閲覧にはご注意ください!!

(LaLa2016年12月号掲載分)

「…ミーシェ、お前カルム王子に惚れているのか?」

後宮でのお茶会の最中に、コレルはミーシェにしれっと尋ねた。
ミーシェは手に持っていたティーカップをゴトッと落とし、中に入っていた熱い茶が衣服を汚した。

「お前を見ていてそう思っただけだ。違うなら良い」
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他の側妻たちから、笑いが起こる。

「聞いた?今の。絶対無理に決まっているじゃない。自分が奴隷だったことを忘れたの?」

「どうして?どうして元奴隷だと無理なんですか?」

ミーシェは野次馬な側妻達に問いかけた。

「ど…どうしてって分不相応だからに決まっているじゃない。」

「奴隷が正妻になった前例もあるんですよね。」

コレルはふっと笑みをこぼし、答えた。

「逆に黙らされては元も子もないな。なぜお前では無理か。それはこの国の利益になるものが何一つ無いからだ。たとえ王子がお前を寵愛しても、周りがそれを認めない。お前を排除しようと動き出し、守る者もおそらくいない。…だが」
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ミーシェは自室のベットの上で、コレルの言葉を反芻していた。

コレルさんっていったい何者なんだろう…
よほどの自信がないとあんなはっきり言いきれないよね。
悔しいけど…少しかっこよかった。

そのまま、眠りに落ちた。


翌朝、まだ眠るミーシェの部屋に、ひとりの男性が侵入してきた。
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ひゃあああああああ!
王宮にミーシェの叫び声が響き渡る。

「な、なんっ」

ミーシェは耳元に手を当てて、床に転がり落ちている。

「相変わらず品のない反応だな。おはよう。よく眠れたか?」

ミーシェのベットに優雅に腰を下ろしているのは、カルム王子。

「おはようじゃないよ!なんで私の部屋にいるの!?」

「起こしに来たんだ。お前に会わせねばならん人がいてな。支度をしろ。」

カルム王子がパチンと指を鳴らすと、侍女たちが音もなくやってきて、ミーシェを捕まえるとものすごい勢いで身支度を始めた。

「あ…会わせるって誰に…」

「俺の母親、王妃だ」

は…お…王妃様ーーーー!?
混乱するミーシェ。


綺麗に正装したミーシェはカチコチになりながら、カルムの隣を歩く。

「後宮入りした挨拶をさせる。他の妻達もしてきたことだ。今は所用でこちらにきているのでな。丁度良い機会だろう。」

「ソウナンダ」

「…ラクダの色は?」

「ソウナンダ」

どうしよう、王妃様ということは後宮で一番偉い人だよね。もし失礼があったら…
心ここにあらずのミーシェを見て、カルム王子はため息をついた。

「面白くないな」

ミーシェをグイッと引っ張ると、そのままミーシェの首元に唇を寄せた。

「いっ…ちょっ…ま…ヤメロ――――!」

ミーシェの凶暴な拳をふいとかわすと、にやりとするカルム王子。

「俺のものだという証を付けた」

よく見ると首元にしっかり、キスマークが…

「なっ!これから王妃様に会うんだよ!?」

「せいぜい頑張って隠せ。お前は俺の事だけ考えていればよい」

…おかげで緊張はほぐれたけど、キスマークが見られていないか気になって仕方ないよ。


2人は王妃の待つ部屋へと入った。

「お待たせして申し訳ありません、王妃」

カルム王子が一礼をした。
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「はい、ミーシェと申します。」

カルム王子にそっくり…でも空気が違う。ピリッとするような…

「私の耳にも入っているぞ。アナトリヤ国アーレフ王に見放された奴隷の娘。」

ミーシェの心臓がドクンと高鳴った。
王妃のピリッとした空気が余計に彼女の心音を高めた。

「カルムと行動を共にすることが多いと、他の王子達から聞いている。…お前が、カルムの助けになろうといつも走り回っていることもな。この先尽くし、しっかりと支えなさい。」

少し和らいだ空気にホッとする、ミーシェ。

「はい…!ありがとうございます」

「下がりなさい、私も離宮に戻る。」

「ではこれで失礼します、行くぞミーシェ」

「あ、はい」

ミーシェは王妃に一礼し、王子の隣に並んで歩き始めた。
その様子を王妃は見逃さなかった。
ミーシェの前にセンスをすっと差し出し、歩みを阻んだ。
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ドクン…

カルムも気づき、振り返って事の顛末を見守る。
ミーシェは目の前にあるセンスにスッと手を伸ばし、王妃を見た。
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多分今のは、親しくなりすぎるなという牽制。
部屋を出ると、ミーシェはへなっとその場で腰を抜かした。

「どうした?」

カルムが手を差し伸べる。
ミーシェはその手を振り払った。

「全然平気!…自分で歩ける」

…ごめんなさい王妃様
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「…全く、この程度で腰をぬかしてどうする。この先身分のある者に会う機会はたくさんあるのだぞ。」

「わかってるよっ。だから大丈夫だって…」
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「俺の妻として、悪くない立ち振る舞いだった。少し甘やかしてやる。」

ミーシェの頬が染まる。
ああ、好きって気持ちは止めることができないんです。


翌日、カルムは側妻達を集めた。

「先ほど知らせがあった。明日、離宮で王妃主催の茶会がある。コレル、ミーシェ、お前たち2人が招待された。各自、準備しておけ。」

一同、ざわめきが起こる。


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ミーシェの苦難はまだまだ続きますね…。
そんな中でも負けない、前向きな姿が好きです。

コレルさんは何か裏がありそうな予感ですね…