※ネタバレを含みますので、閲覧にはご注意ください!!

(花とゆめ 2016年22号掲載)

ギルモア侯爵邸で改めて挨拶する、レオンとエスター。
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「遠路はるばるよく来てくれた」

「こちらこそ先ほどは失礼しました。突然の訪問をご快諾いただきまことにありがとうございます。お会いできて光栄です、ギルモア侯爵」

「…ヴァレンタイン卿…いやここはあえてウィンターソン卿と呼ぶべきか。この邸にウィンターソンの血を…吸血鬼ハンターを迎えるのは初めてだ。歓迎するよ。」

レオンはエスターの手をぎゅっと握った。
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「本題の前に…少し彼女と話をしたいのだがいいかな。」

突然の申し出に、エスターの心臓が跳ねた。
レオンは一呼吸つくと、何も言わず席を立って、少し遠くに離れた。

2人の間に気まずい沈黙が流れた。

「?」

「エスター…」

「はっはい」

「もうひとりはアルジャーノンと言ったか。あなたたちふたりは似ていると聞いているが。兄も母にそっくりなのか?」

「えっ、あっ、どうでしょう…でも兄の方が美人なのでお母さんに似ていると思いますが…」

「…そうか」

はたまた沈黙が流れる。

「…私に何か恨み言はないのか。言ってみろ何でも受け付ける」

ギルモア侯爵はぎゅっと口を結びながらたずねた。
慌てて否定するエスター。

「えっ!?いえ、そんな恨むことなど…」

「メグから私の事を聞いていないのか?」

「?いえ、詳しいことは何も…」

「そうか」

エスターは手を固く握りしめ、勇気を振り絞って聞いた。

「…あの教えていただけませんか?ギルモア侯爵は吸血鬼と人間の共存に反対されていると伺っています。そんな卿にとって、お母さんはいったいどんな存在だったのか…」
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ギルモア侯爵は目を閉じ、眉間にしわを寄せた。

「出会いはジェイルさまの一目惚れだったんですよ」

「ユアン!」

召使のユアンが突然横から答えた。

「ジェイルさまは口下手でいらっしゃる。先ほどから話がまったく進みません。私から概要をご説明させていただきます。よろしいですか?」

にっこり微笑むユアンに少しばつが悪そうな表情にする。

当時、ジェイルはまだクリスティアンと頻繁に交流していた。
多少思想の違いはあれど、ふたりはもともと仲良しだった。

ある晩、いつものように黒バラ城を訪れたジェイルは運命的な出会いを果たした。
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人間との共存を拒んできた吸血鬼の王が、あろうことか人間の娘に恋をした。
それから、ジェイルはことあるごとに黒バラ城に通いつめ…
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ジェイルはメグを妻にと望んだが、配下には反発しかなかった。
王としての立場と愛する人のはざまで、ジェイルは苦悩の日々を送った。

そんなとき…
メグは黒バラ城から、ジェイルの前から姿を消した。

そのときメグは吸血鬼と人間の禁忌の子を身ごもっていた。
その子供こそが…

「エスター様、アルジャーノン様です」
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「十数年前に一度、親子3人で暮らされていたロンドン下町の宿をつきとめたのですが、あなた方双子はさすがダンピール気配を悟られ逃げられてしまった。」

レオンは何か思い出すような表情をした。

「あの日メグさまが黒バラ城から姿を消したあの日から、ジェイルさまはずっと後悔しておられた。メグさまと子供達を守ることができなかったご自分を呪い続けていた。」

「そして、昨年メグさまが亡くなられたとお聞きになったときから、ジェイルさまは生きることを放棄されたのです。」

「放棄?」

「ジェイルさまはいま血をいっさい召し上がっておりません。このままではどうなってしまうか…」

ああそうか、会った時から感じていた
このひとには生気がなかった。これは緩やかな自殺だ。

エスターは椅子から立ち上がった。
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ギルモア侯爵、このタイミングでエスターに会えて本当良かった。。
次号はおやすみ!