※ネタバレを含みますので、閲覧にはご注意ください!!
 
(花とゆめ 2016年22号掲載)

冥府で過ごした一夜が明けて、
コレットは地上での旅を再開していた。

「フォーーーー!楽し~~~~風になるフォーッ」

コレットはヘラクレスの馬に乗りながら、興奮の真っただ中。
旅の途中で偶然再会し、ヘラクレスが以前のお礼にと馬で送ってくれることに。

「そんなに興奮しなくても」

「だって乗馬初めてなんだもん。ありがとねヘラクレス」

「俺に任せて景色でもみてな!」

頼もしい!
なんか前よりさっぱりしてる。これが世間で勇者と呼ばれる本当のヘラクレスなんだ。
これなら明日か明後日にはマリーお姉ちゃんに会えるかも。
最高だーーー!
…と思った矢先。
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「えっえっ?」

「すまん泣。…いや大丈夫だ、街の明かりを探す。俺視力10あるんだ」

星の光をたよりに何とか街へたどり着く。
宿へ行こうとするも、ヘラクレスは財布を落としたことに気がついた。

気は優しくて力持ち、なのに案外おっちょこちょい…
そんな勇者で大丈夫か…

「いっただきまーす」

「本当にいいのか?宿から何から奢ってもらって」

「馬に乗せてくれてるんだからおあいこよ」

「でも俺のためにコレットの財布がすっからかんになるかも…」

「そしたら働いて稼ぐからいーの」

コレットたちが食事をしていると、隣の席で盛り上がっている。

「吟遊詩人が歌ってたんだよ!”勇者ヘラクレスの12の冒険”わくわくして面白かったなぁ」

「俺は水蛇のくだりが好きだな…九つの頭を持つその水蛇はげに恐ろしきレルネの沼の主。頭を切り落とせど薙ぎ払えど生えてくる。勇者のヘラクレス万事休す。…ってな。」

コレットはヘラクレスに聞く。

「大変だったのね」

「まあな。たしかあの時は切った首の方を火で焼いて倒したんだよなー手こずったよ…」

「ん?」

隣の席の男たちがヘラクレスとコレットを振り返った。

「あ、あんた今の、もしかして本人…?」

「え、いえあの」

「あっこのマント、ネメアの森の獅子退治の獅子…!?」

「おいおいまじかよほんものーーーっ!」
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「そこの薬師さんとはどういう?」

「今は彼女を送り届ける用事を」

「へぇ~~そりゃ心強いなあ。薬師さんなんの心配もいらないぞーっ」

ヘラクレスは少し下を向く。

「…っ、俺はそんなみんなが思ってるような奴じゃない。今日だって道に迷うし財布落とすし、勇者ヘラクレスなんて物語の中でしか生きられない。別人だ…」

ヘラクレス…

「ねぇ、さっき迷子になったとき、もしあのまま一晩過ごすことになってたらどうするつもりだったの?」

「そりゃもちろん火を焚いて朝まで番をしたよ。コレットを無事に送るために俺はいるんだ。」
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一同、ヘラクレスのかっこよさに黄色い歓声を送る。

「サインください~~!」

そうか勇者はこんな感じがきっといいのかも。
かっこよくてちょっと抜けてる。人に親しまれてこその勇者物語。


「とゆーわけで、今日は一日大変でした~」

冥府でハデスさまに報告する、コレット。

「…ふぅん。ヘラクレス、いたなそんな奴。」

「ちなみにケルベロスのくだりは、ヘラクレスが吟遊詩人にあいまいに話したとかで…冥府の番犬三首のケルベロス互角に戦う勇者に冥王いたく感心せり、その勇者に免じて貸し与え給ふ…ってなってました。」

「私は感心などしていないぞ」

「ヘラクレスに冥府行く?って聞いたんですけど、固辞されちゃったんですよね。」

「別に来られても話すことはない。わだかまりも何もない。好きに生きよ。」

ハデス様…?一気にしゃべりすぎたかな?

「…ハデス様今日何かありました?」

「何もない。裁判して終えた。それだけ。何も変わらぬいつも通り。お前が地上に行ってしまうと、とたんに私はお前の中からいなくなる。昨日はあんなに私のそばにいたのに…」

ハデスはコレットに静かに視線を送る。

「あんなに私の名前だけを呼んでいたのに。」

ふいっと顔を背けたハデス。

ハデス様…
何も変わらない、いつもどおり…
コレットは昨夜のハデスのセリフを思い出した。

私の中にハデス様はいない…?

「……そんなことないですよ…?だって今日お布団に入ったらきっと思い出しちゃうもん。
昨日のハデス様とその…」
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「あんなこと、わたし、ハデス様とだけだったもん。」

あなたの腕が、寝息が、夢が…
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コレットのあまりの可愛いさに一瞬固まるハデス様。
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「今、何と…?」

「え」

ハデスはコレットへ手を伸ばし、ふわっとコレットを抱き寄せた。

「よく聞こえなかった、もう一回」
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「ぜったい聞こえてたあ。」

くすくす笑いながら、ハデスは額を寄せる。

「聞こえなかった」

「っ!ハデスさまのばかあ」

離れて、別れて、今日は眠る。
いつもの夜に戻る。
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だけど、私に触れるあなたの残した感覚は、もう消えない。


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ハデスさまとコレットもうラブラブすぎる。。。


新刊出ました!
無防備なコレットにハデスさまの想いが溢れる展開、たまらんです!