※ネタバレを含みますので、閲覧にはご注意ください!!

君のために (BELOVE 2016年19号掲載)


春時兄のことを思い出した、鈴子。
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ええと、そのあとどうしたんだっけ…
どこで兄様と再会したんだっけ。

その前に誰かと出会ったような…
ふと風車を手にしている男性の影が頭に浮かぶ。

思い出しそうなタイミングでズキッと頭が痛む。
どんどん頭が痛くなる。
イタタ…なんか頭重い。変な感じ。

春時との思い出を、アルバムをたどるようにひとつひとつ思い出していく。
兄様は私のことを嫌ってた…
ああ、なんかごちゃごちゃしてはっきりしない…それで…兄様は…

鈴子は頭を上げ、部屋の中を見渡した。
ここって兄様と話してた部屋…。

「兄様どこだろ?」

私、話し中に眠ったの?
そんなに疲れてた?

ふと、机の上に手紙があることに気が付いた。

誰にも会わず、しばらくこの家にいてくれ。
秋山家には連絡してある。
佐之次が帰るまで外にも出ないように。
春時。

これだけ?どういうこと…?
…そうだ、春時兄様はこういう人だった。大事なことほど言わない。
私が忘れている間だって…。

鈴子はふとごみ箱をみると、そこには手紙の書き損じが捨てられていた。
手に取ろうとするも、突然誰かがやってきた。

お客さん!?どうしよう!?




自宅の縁側で、新聞を読んでいる津軽。
その新聞には、秋山氏が草津で暴漢に襲われたという記事が一面になっていた。

そこへ新聞を片手に河内がやってくる。
「津軽―!これみた?なんでこの事件載ってるの?伏せたはずじゃ…しかも鈴ちゃんのことまで!財産詐欺だとか、嘘ばっかり並べて!」

津軽は浮かない顔をしながら、つぶやいた。
「よく、もみ消されなかったなぁ。やっぱりそれだけ秋山さんの力は弱まってた…ってことなんだろうな…」

「津軽…何をのんきな…鈴ちゃんこんな書き方されたら…」

「秋山家にはいづらくなるだろうね…内情を知っている人間にしかわからない内容も盛り込まれている。…となればこの記事を持ち込んだのは…春時君かな…」

河内は驚く。
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「話してみれば?」
河内は津軽の様子を伺いながら言う。

「うーん、今はあんまり顔を合わせたくないなぁ」

悋気だ!!!と顔をにやけさせて津軽をからかう河内。
断じて違う!!!と少し頬を赤らめながらムキになる。

…と門を出たところで、待っていたのは春時だった。



場所を変えて、津軽と春時は話す。

「君が私に話なんてめずらしいよね。」

「新聞記事のことならあなたがいつまでも何も手を打たないから、やったまでです。」

「君らしいといえば、君らしい。他を顧みないやり方だけど、こんなことをしたら彼女が…」

「鈴子は家にいます。だから安全ですよ。」

「気持ちの話をしてるんだけどね…」

「ふ、あなたに何か言えた義理ですか。他の女のために欧州まで行ってさんざん振り回して、それでもなお鈴子の心を占める。」

津軽は眉間にしわを寄せながら、答えた。
「…………今は君に分があるじゃないか。」

「張りぼてで作られた今ですよ。あなたがいるかぎり。」

「私はそうは思わないけど…もとから私たちにそんな差はなかったよ。君が「兄」なら私だって「となりの大人なお兄さん」だ。ひっかかりがあったとすれば、自身の心だろう。」
春時は津軽の言葉に少し、反応した。

「本当は昨日、鈴子をさらってどこかへ行こうかと思いました…でもだめでした。」
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春時は帽子を深くかぶり、津軽に手紙を差し出した。
津軽は怪訝な顔で受け取り、手紙を見る。


…ひな!?


「そこの場所で取引だそうです。お代はあなたの命でいいですよ。」
春時は冷たい表情で去っていった。

「春時君!!」

君はひなと組んだのか!?
驚きを隠せない津軽。



一方、鈴子は訪ねてきた津軽母と話をしていた。

「おはぎ作りすぎちゃってね、持ってきたのよ。お邪魔するわねー。はるちゃんはいるかしら。」

「いえ、兄様は留守で…」

驚いた津軽母。

「あらぁ!記憶戻ったの!?私の事わかる!?」

「あっ、いえっ、さっきやっと兄様を少し思い出したところで…まだいろいろぼんやりしちゃって」

「そうなの~残念だわ~」

「何か本当…ちょっとわからなくなってしまって…」

そんな時は食べて寝ましょうと元気に鈴子を励ます津軽母。
津軽母と話している中で、自分が丸1日も眠っていたことに気がつく。
もしかして、お茶に何か入ってた?

春時兄様はなぜそんなことを…外で何かおこってるの?

…と扉が開く音がした。
もしかして、兄様!?鈴子は一目散に扉へと向かう。


「津軽さん!!!」

「やあ、驚かせた?戸が少し開いていてね。」

「…そう…でしたか…」
春時ではなく、少し表情を落とす鈴子。津軽はその様子を見逃さなかった。

「ハハ…あからさまに残念そうだね。春時君だと思った?」

「どこに行ったかわかりますか!?」
食いつく鈴子。

「今どこにいるかってことなら知らないけど、あてはあるよ。その件もあって来たからね。」

津軽は状況を鈴子に説明する。
「これから私は古い友人と話をつけることになってね。春時君も少し関わっている。その友人の目的は私であり、君でもあるかもしれない。本来は君を遠ざけておくべきなんだと思うけど」

津軽は少し下を向きながら、言葉をつづけた。
「私としては君にも来てもらいたい。もう君をだましたり、嘘はつきたくないから。」

「行きます!私会わなきゃ、会って話をしなきゃ!春時にぃ…」

「そんなに春時君が好き?」

津軽は鈴子の言葉を無理やり遮った。
ふとまなざしを落とした津軽の姿が鈴子の目に映る。

「あの…えっと…」

「あっ、やっぱりいい!今はいい!もう少し答えは待って!私が同じ土俵に立ってからにして!」


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段差のせいで 目線が一緒
年上の人なのに年下みたい
頬を染めた津軽をまっすぐに見つめる鈴子。

なんで私まだこの人のこと思い出せないんだろう

好きって…初めて言葉にされた気がする。
胸の奥が熱い。


「あの…」
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ぷっ

部屋の奥から笑いをこらえる声が。

「お母さん…!!」
津軽は頬を染めながら、驚いた表情で母をみた。

「やだわぁやだわぁいい歳して恥ずかしいわぁ。えっ?何って?今の話?何がなしなのよー大アリでしょうがー」
母はとても楽しそうに津軽をいじる。

「あんたがあんなこと言うようになるなんてね~~~~~」

「うるさいですよ!今に馬に蹴られますからね!先に外に出てます!」

ふふふ、からかいがいがあるわぁ。と笑う。

「冗談はさておき」
津軽母は鈴子の肩に手を乗せて、微笑む。

「ねぇ、鈴ちゃん。私はね、旦那様の近江さんが好きなのね。でも子供たちのことも好きだし、亡くなった両親のことも好きなの。大好きな親友だっているわ。」
なんて、幸せそうな顔。津軽母の表情に鈴子は見惚れる。

「形は違うけれど、もとになるものはたったひとつで全部一緒」
胸に迫る言葉だった。

「春ちゃんにも伝えてね。愛はね、ひとつじゃないの。大切なものに順番なんてないのよ。」
津軽母は鈴子に向かって優しく微笑んだ。




津軽からの告白が聞けるなんて…!
学生みたいに初々しい津軽、かわいい。。



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