※ネタバレ・画バレを含みますので、閲覧にはご注意ください

Story  
言伝て(花とゆめ 2017年6号掲載)


姫様 どうかご無事で

そう言って、彼は私とハクを逃がす為
囮となった

あの悪夢の夜に…

「ミンス…よね?」

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「良かった…無事で…また…会えるなんて」

ヨナは言葉を詰まらせながら、彼に笑顔を向ける。

「私…あの時あなたに助けられたお礼を…」

「いいえ、ヨナ姫様…私は今スウォン陛下にお仕えする身、礼などおっしゃらないでください」

ヨナもハクも、固まる。

「ミンス、どうして…」

ヨナの問いかけには応えず、彼はオギの元へ近寄り、文を手渡した。

「陛下から文をお預かりしてきました」

「おう。暗号だからな、失礼して俺が読ませてもらうぜ」

オギは文に目を通して、書いてあることを伝える。

「ウォンの答えはこうだ…要求に応じる事は出来ないと」

ヨナは焦りの表情を見せる。

「スウォンと直接会うことはできないの…!?」

ミンスが答えた。

「お会いしても、陛下は簡単に意見を変える方ではありません。真国のコウレン姫の憎悪をスウォン陛下はご存知です。たとえ、表面的に和解しても、コウレン姫の憎悪は消えず、反乱が必ず起きる。だから、あなた方と話しても平行線だと陛下はお考えなのだと思います。真国は戦での決着を求めている…陛下は既に動き始めています」

「…!!」

「スウォンにとっても、戦になった方が都合いいんだろ。真国に勝てば高華国は戒帝国にも対抗しうる力を得ることが出来るしな」

ハクは少し間をおいて、尋ねた。

「…ミンス、お前はどう思っているんだ?イル陛下の戦わない思想をお前は尊重していただろ?」

「………」

「あれから何があった?」

ミンスの表情に影が差す。

「お前はイル陛下の死の真相を知っている。口封じで圧力がかけられているんじゃないのか?」

「…いいえ!違います、私は…っ」

ミンスは苦し気な表情で、続けた。

「私は…イル陛下の側仕えをする以前は…スウォン様のお屋敷でお世話になっていたんです」

「なに…?」

ハクは驚きの表情を見せる。

「私の母が、スウォン様のお母上、ヨンヒ様付の医務官だったので、幼かった私は母と共にスウォン様のお屋敷に。14の時に、私は試験に合格し、イル陛下の側仕えとして城に入りました」

「じゃあ、お前は昔からスウォンと顔見知りだったのか…?」

「………はい」
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「城の様子をケイシュク様に度々伝えていたのですから」

ミンスはギュッと拳を握りしめた。

「ケイシュク様にはスウォン様のお屋敷にいた頃、お世話になっていたので、城下町に来られた時、世間話のつもりで……それがっ……側仕えとしての私の無自覚が、こんな事になってしまうなんて…」

「ミンス…」

「姫様…今日私はこれを告げるためにここに来ました。私はイル陛下を葬った人間の一人です。今更許しを乞うつもりはありません。姫様の無念が少しでも晴れるのならば、どうか仇を討ってください」

ミンスは深々と頭を下げた。
ヨナとハクは、わずかに震える彼を見ていた。

「…ミンス、あなたの罪滅ぼしなら、あの夜にもう終わっているわ。あなたに救われて、私は今ここに立っているの。あなたの父への想いが嘘ではないのなら、私はそれだけでいい」
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ミンスは湧き上がる涙を必死にこらえていた。

「あと、仲間がいるの。今は真国に捕らわれている仲間が…」

「えっ…」

「彼らを助けるためにも戦を止めたいの、これは個人的な事だけど…彼らは私の家族だから」

家族…

「姫様…ハク将軍、スウォン陛下は真国との戦に空と風の部族軍をぶつけるおつもりです」

「風の部族…」

「では、これで…」

「ミンス、どんな形でも、逢いに来てくれてありがとう」

ヨナの穏やかな笑顔を見て、
ミンスは扉を出た後も、その場に立ち尽くしていた。

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頭を上げられない。

あんな事があったのに 光のような人だった
ヨナの笑顔が頭から離れない

自分は罪悪感と絶望に押しつぶされ、
姫様と同じ時間分、何をしていたのだろう

ミンスは涙をこぼしながら、空を見上げた。
もう見ることのできない、懐かしい顔が浮かぶ

イル陛下
私は 今…
あなたと姫様のお話がしたいです


緋龍城にて、
戻ったミンスを出迎えた、スウォン

「…ご苦労様です。どうでしたか?」

「重ねて平和的解決を求めてらっしゃいました」

「…」

「それと、仲間が真国に捕らわれていると」

「……………そうですか」

「…やはり、戦は避けられないのでしょうか?」

「この国にとって、最善を選ばなければ、私が玉座にいる意味はありません」

「そのために…またあの方を苦しめる事になっても…?」

「…いち個人を優先する王がいる国は滅びます」

ミンスは暗い表情でスウォンをただ見ていた。

ヨンヒ様つき医務官だった母に免じて、私の命は助けられたのだと、ケイシュク様は言った。
たとえ、私が姫様側についても、この方にとっては些末事だろう。

私はこの方を恨んでいる
きっと、今でも

しかし、王という人間は
優しさを抱きしめていては、進めないのかもしれない


ヨナ達は、今後について思案していた。
ハクはあることを決意する。

「――オギさん」

「お?な、何だ?」

「あんたはこの国の至る所に仲間がいる。情報を回すのはどこより早いよな?」

「…まぁな」

「ちょっと頼まれてくれねぇか?」

「何を?」

「風の部族に協力を頼む」

ヨナは驚いた表情を見せる。

「ハク、それは…」

「風の部族軍が動く前に、これを止めなきゃならない」

「でも王命に逆らえば、風の部族は…」

「あいつらは、俺の命令なら聞く」

ヨナは声を荒げた。

「それは、ハクが一番やりたくなかった事でしょう!?」

「…風の部族を出る時、ジジイの言ったことを覚えていますか?」

胸が張り裂けるような、温かい言葉だった。

いつか あなたが 
再び絶望に立たされ、助けを求めた時

我ら風の部族は、誰を敵に回しても
お味方いたします
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誰よりも巻き込みたくない、大切な人達
彼らを想い胸を痛めた。


「ちょ、ちょちょちょっと待て待て。それはあれか?俺に王命に叛く作戦に加担しろと言ってるのか?」

「伝令を出すだけだ」

「……あのな、俺は…ウォンが可愛いんだ。お前らには悪いが…あいつが王であることが国の為にも良いと思っている………だが、俺は…仲間を裏切る奴を許せない…お前らを裏切ったウォンが…どうも納得がいかなくて、胸がザワついている…」

オギは机にうなだれた。

「俺も…邪魔になったら殺されんのかな…」

「試すか?ウォンの愛を。絶対片思いだな」

仲間が冷やかす。

「命がけでやる事かよ…」

オギは少しの間考えた。

「…………金は?」

「え?」

「俺の情報は有料だ。王家の人間だって、例外じゃねえぜ」

「…!…あ、いや待て、金はない!」

「おととい来やがれ…」

ヴォルドが小遣いを出そうとするも、たいした金にはならず…
するとヨナが袋から何かを取り出した。

「これでどうかしら」
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差し出されたのは、大切な思い出の品

「うおっ、ちょっなんだこれ、すっげえええええ~~っ」

ハクは、驚いた表情でただヨナを見つめる。

「姫さ…」
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「問題ない?」

「問題ないどころかこれは…」

「では、お願い」

「どえらいネタ引き受けちまったな」

オギは、風の部族への伝令を引き受けた。




Comments
全体的に切なかった…
ミンス、なんてつらい…
ヨナ達と別れてから、ずっと心に重荷を抱えて生きてきたんですね。
彼の暗い表情からそれが伝わってきました。
自分の本意でなかったとはいえ、イル王の殺害に関わってしまっていた。
それは自分を許せないでしょうね。
ツライ…

しかし、今回ヨナに会えて良かったなとも思います。
彼女に笑顔を向けられて、少し許されたのではないでしょうか。
ミンス、何か大事なところでヨナを助けてくれる気がします。
ここで彼が出てきたということは、キーパーソンの1人なのではないかな。

そして、風の部族に助けを求めるのですね…
ヨナとハクの気持ちを考えると、切ない。
大切な人たちの首を絞めると分かっているのに、彼らに頼るしかないとは。
風の部族がヨナについたら、スウォンはどう動くのでしょうか。

最後に驚いたのが、ヨナが髪飾りを差し出したこと。
スウォンへの想いを吹っ切れて良かったなと思う反面、
やっぱり、何か切ない。。
ハクはどう思ったのでしょう。
この旅の間も唯一捨てられなかった簪を、あっさり手放したヨナを見て。
ヨナの気持ちがもうスウォンではなく、ハクに向いていることに気付いて欲しいです。

これからどうなるのか、物語がどんどん動いていて、
次号も楽しみです。


Comics




暁のヨナ 21 (花とゆめCOMICS)
草凪みずほ
白泉社
2016-08-19