※ネタバレ・画バレを含みますので、閲覧にはご注意ください

Story (花とゆめ 2017年5号掲載)

男装総選挙1日目終了
最終審査進出の上位5名に、安藤星の名前があった。

「星すご~い!!」

友人達が、星に抱き着いて喜ぶ。
星は男役の演技指導をしてくれた、アルマのことを思い出す。

嬉しい!アルマさんに早くこの結果をお知らせしたい…っ
そして何よりエマさまに…っ

星が嬉々とした表情で、エマを振り返った。
エマは星の顔を見て、彼女が兄のアルマと親しく話していた場面を思い起こしていた。

星、さっき何故僕の兄と一緒に…?
僕を狙う彼と…あんな楽しげに…
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「ハイところで」

鳴海先生が最終審査の課題を発表する。

え…
実技「キスシーン」

「なんたって、魅力的なキスシーンはラブストーリー主体のお芝居にとって、必須アイテム…って、あ、妹科生ってキスシーンの授業まだだっけ?」

星を筆頭に、固まる妹科生たち。
参考にと、先輩方のキスシーンDVDを見せる先生。

「ま、アリス歌劇団のキスはフリですから」

DVDの凄さに、大混乱の星。

無理です!
キキキキスシーンてあんなに顔近づけるんですかー!?
くちびる…
ギリギリ触れそうな距離なんですがっ

どうしよう…でも何とかするしかない
舞台上の出来事、何でも演じるのが役者なのだから

たとえ、キスの授業どころか
キス自体
恋愛自体
未経験でも…

星はチラッとエマの様子を窺う。

エマ様に相手役…
ご指導お願いできたら…
ご迷惑でなければ…

「でも、緊張も何もないよね~なんたって女子同士なんだし」

星は鳴海先生の言葉に固まる。

そ、そうだった…
こうみえてエマ様は男で…
しかも王子様で…

多分間違いなくご迷惑だ無理…と心の中で、絶望にさらされる星。
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あ…れ…?
何で?

正体不明の胸の高鳴りに、戸惑う。
頬を赤く染めながら、ふいっとエマから視線を外した。
その様子に気がついたエマは、不思議そうに彼女を見つめる。

何を考えているんだ私は…
エマさまと目が合わせられない
変なことに思いを馳せてしまった報い?
妙な意識スイッチでも入ってしまったのか。

胸の鼓動はさらに激しくなる。

あれ…どうしよう…
ドキドキさせるどころか、自分のドキドキがおさまらないっ…何で…!?


鳴海先生の説明が終わって、部屋へ戻ろうとしていた折、エマに声をかけられた。

「星、課題の件、大丈夫ですか?」

「え…えまさま」

「何か僕に相談にのれることがあれば…」

慌てる星

「えええ、私とエマさまがキスについてですか!?」

「いえ…相手役…とか」

「だ…大丈夫です。私っ、自分で何とかしますから」

エマは少し驚いた表情で星を見つめる。

あわわわ私のバカ
何でだろう、怖い…今、エマ様とあんなふうに向き合ったら、男役としての気持ちよりも、自分自身の動揺が前にですぎて、演技に素の自分が顔を出しそうで…


と、そこに突然騒がしさが増した。

「きゃー!何この犬しゃべるわよ!可愛い~!」

ふと2人が振り返ると、向こうから全力でかけてくる犬…いや、アルマ。

「あ…アルマさん!?」

「わわっ、ひかりっ」

犬の姿のアルマは星の上着にずぼっと潜り込んだ。

「犬どっちいった安藤ぉぉ!」

「あ、あっちです!」

咄嗟に嘘をついた星。
皆が走り去っていった後。

「アルマさんっっ、何してるんですかこんなところで!!」

「だーかーらー、あの後お前がどうなったか気になって…師匠心で来てやったんだぞ」

「あっ、そうです!」
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少しショックを受けた表情を見せる、エマ。
星…なぜ…
何かをグッと飲み込み、その場を立ち去ろうとした。

「あ、エマ様…どちらに…」

「部屋に戻ります。気分が優れないので、失礼します」

「トーマ…?」

アルマはここで初めて、憎き弟が近くにいることに気がついた。
低く唸り、エマにとびかかる。

あ…しまった…お2人は敵同士だというのに…それを忘れるなど不覚っ!
星はとびかかったアルマを、竹刀でべちっと払った。

「お前―――――っっ」

「すみません、平手打ちで事足りるな、と抜いてから気付いてしまい…」

ぎゃんぎゃん喧嘩する星とアルマ
エマにとっては、その様子は仲良く戯れているように見える。
自分よりも兄を慕っているのか…
エマは何も言わずに部屋のドアを開けた。

「あ、エマさま…」
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エマの暗い表情を見て、固まる星

「あ…アルマさんのせいですよー!よくわからないけどっ、あれ絶対怒ってらっしゃいます!」

「知らねーよ、お前のせいだろ?」

「は?」

「お前あいつに何かしただろ」

「何もしてません」

「じゃ、それだろ。アイツ、嫌なことがあるといつも喉まで上がった思いを、グッと飲み込んで、何も言わない代わりに笑うんだ」

星は今日のエマの様子を思い出す。
そういう表情、何度もあった。

「心閉ざしたり、拗ねてるときの合図みたいなもんだよ」

エマ様が…私に何か思うところが…?
拗ねてる…?
うそ…

「アルマさんって、やっぱりちゃんとエマさまのお兄ちゃんなんですね。命を狙ったり、ひどいことして仲悪そうに見えるけど、エマ様のことよく見ていらっしゃる。」

星は明るい表情になる。

「やっぱり、アルマさんは思った通り素敵な人です。そんな、アルマさんに人殺しなんてできるはずない」
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「…な、なに言ってんだ、俺はトーマなんか大っ嫌いだ!必ず抹殺…」

ぎゃんぎゃんさけぶアルマに、耳をふさいで聞こえないふりをする星。

「そうだ、報告!男装総選挙、無事最終審査に進出できました。アルマさんのご指導のおかげです。ありがとうございます。この事を真っ先に、アルマさんに報告したくて…あの時私、アルマさんに出会えて本当に良かった」

とびきりの笑顔でお礼を言う、星。
アルマは彼女の顔を見て、ふと昔母親の言葉を思い出した。

産まなければよかったのに…

「…それって、俺がいないとダメってことか?」

「あ…はい…実は最終審査はキスシーンなんですが、どうしたらいいのか皆目見当つかず。それどころか、気持ちが乱れて、演技なのに自分が溢れてしまいそうで。男役として演技できそうにないのが怖くて…こんなことアルマさんにしか相談できなくて…私…」

アルマの表情がパッと明るくなる。

「そっか、お前そんなに俺がいなきゃだめか!しょーがねーな~」

星は先ほどのエマとのやり取りを思い出した。
あ…わたし…もしかしてエマさまの飲み込んだ思いって…

「ちょっと急用を思い出しまして、いったん失礼します!」

「あっ、おい、俺でわかる事は教えてやるから、絶対優勝頑張れよなっ」

「はい…っ」

星はエマの元へと駆け出していった。



Comments
久しぶりの連載でした~
樋口先生の作品は、キャラの心情が丁寧に言葉にされているので、伝わりやすいです。
感情の移り変わりに、いつもドキドキさせられます。


恋愛モードに入ってきました。こういうの待ってました。
エマさま、嫉妬しまくりですね。
星のこと好きなんだろうな…
今回、星も少し自覚し始めたところが良かったです。

アルマのこと信頼して、頼っていますが…
もうあんな素敵なこと言われたら、アルマは星に惚れちゃいますよね。
星は無自覚だろうけど…

感情を抑えるのに慣れている、王族のエマが
星に対しては独占欲出してしまう展開を期待しています。
次号も楽しみ!


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