※ネタバレ・画バレを含みますので、閲覧にはご注意ください。

Story
それぞれの答え(BELOVE 2017年4号掲載)

うーん…
年頃の娘で、この髪型はやっぱり相当目を引くらしい

路の往来で、鈴子は少し困った表情。
道行く人は、皆揃って彼女を振り返る。
ひそひそ話まで耳に届いてきた。

そりゃあ、めずらしいものね…
楽なんだけどな

知人達の反応は、それはもう酷いものだった。
おじい様はカンカンだし、河内や手瑠璃ちゃん、手茉莉ちゃんも大騒ぎ。

「え~~~出家!?」

「女の命が!!」

「この衝撃!!書き留めますわ!」

ただひとり…
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考えを巡らせながら歩いていると、思わぬ人に出くわした。

「誰かと思ったぜ、嬢ちゃんかァ」
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「気分転換です」

「気分転換で女がそんな頭にするかよ な~」

「何かあったのか」

「何も!嫌なことは何ひとつ!」

とてもにこやかな表情で答える鈴子に、倉田もふっと笑みをこぼした。

「まぁ、晴れ晴れした顔してんなぁ」

「それより、お2人揃ってこのあたりにいるなんて…何か用事でした?」

「ああ、藤島にあいさつ代わりの報告にな。さっき済ませて、今帰るところだ」

平賀は鈴子をじっと見つめる。

「傷は―――もう大丈夫か」

ほんのり緩んだ空気を感じ取り、倉田は黙って2人を見守った。

「ええ、もう。その節はいろいろお世話になりました―――平賀さんも探してくださったって聞きました」

「いや、俺はそんなには――」

「感謝してます。記憶のない時もいろいろ迷惑かけて…」

平賀は驚きの表情を見せる。

「思い出したのか…」

「あ、はい」

「全部?」

にっこり微笑む鈴子

「ええ!出会った頃のツンツンも、フランスでちょっと親切にしてくれたことも。あ、婚約者になった時も!」

「婚約…」

倉田はへーほーと言いながら、面白そうな表情で平賀を見る。

「違います、お世話になった方が勝手に…もう、なくなった話ですし!」

「まあ、いいんじゃねーの。俺はこの先の茶屋のいい女、口説いてくっから。おまえら、二人ゆっくり話でもしていけや」

「倉田さん、自分はべつに―――」

「いいって、いいって。あ――――っと、嬢ちゃん、その髪ァ斬新だが、よく似合ってんぜ。俺ァ、わりと好きだなァ。なぁ平賀!」

「・・・・・・・・」

そのまま、ズカズカ立ち去る倉田。

「なんなんでしょうね、どう思います?」

「えっ、まあっ…似合ってる…んじゃないか。か…いかつな感じが」

平賀は少し面喰った表情で、たどたどしく鈴子をほめた。

そういう意味じゃなかったんだけど…ほめられた。
鈴子は素直に礼を言った。
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「気に病まなくていい、自分の道に後悔はないから」

この人もまた、つらい日々を送ってきた
まじめで、清廉で、強い人――

最初の出会いも
2度目の出会いも…

「第一印象のままです」

鈴子は平賀をまっすぐ見た。

「まぁ―――…最初のうちはただの失礼な人、でしたけどね」

平賀はふと、かつての想い人を頭に描いた。

「養子先の家で、正義感の強い世話焼きのいとこがいた。無茶をして、怪我をして、おまえは少し似てるな…と思った」

まえ…名前を言っていた人のことかな…

「―――けど、やっぱり違うな。違うところばかりに目がいって…似てないから…いっそう……」

その先の想いは言葉にならなかった。

「…おまえ、藤島さんとは―――」

「え、津軽?」

「―――いや、なんでもない…」


2人の間に流れた微妙な空気は、突然現れた河内によってかき消された。

「鈴ちゃん!」
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平賀は鈴の表情から、彼女の気持ちを汲み取った。

「桐院!」

急に名を呼ばれ、鈴子は河内から平賀の方へと向き直る。

「平賀さん、話は―――?」

「”気でも引きたいのか”」

平賀の顔が、少しほころぶ。
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「それじゃあ」

鈴は急に彼との出会いを思い出し、なぜか胸を打たれた。

出逢った頃の…鮮烈な…


平賀がスタスタ歩いていると、すぐ近くに倉田が立っていた。
どうやら、こっそり話を聞いていたようだ。

「なんだよ、だらしねぇなァ」

「茶屋のいい女に会いにいったんじゃないんですか」

「こっちのほうがおもしろそうだろう?」

「それは、ご期待に沿えず、申し訳ありません」

ぶっきらぼうに答える、平賀。

「戦わずして、諦めるかァ。けっこうお似合いだと思うんだがなァ」

「何か勘違いをしてますね。自分はなんとも思ってませんよ」

倉田は平賀の表情を見て、静かに微笑んだ。

「まあ…そういうことにしておいてやるよ」

2人は寒空の下、がやがやと煩い往来に消えていった。


一方、津軽の店にやってきた鈴と河内。
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絶対おかしい…と河内は疑いのまなざし。

鈴子も津軽を無言でじっと見つめる。

「どうかした?」

…普段どおり

「え―――と、京太さん入荷の品のことだけど…」

ふと、鈴子は異変に気がついた。

「津軽っ」

彼女が手を伸ばすと同時に、津軽がその場に崩れ落ちた。
店の者が皆、何事かと駆け付ける。

「津軽!?」

鈴子は手を伸ばし、気を失った彼の様子をうかがった。


しばらくして、
家の布団の中で目を覚ました、津軽。

「気がついた!」

すぐそばに座る鈴子が目に飛び込んできた。
慌ててがばっと身体を起こす。

「少し熱があるみたい。疲労だろうって。河内は帰ったからね」

鈴子は少し暗い表情で、彼を見た。

「津軽…まだ」

ひなさんのことが―――

「あ、いや。違うよ。おそらく今、君が考えていることじゃない」

「それじゃあ、何が…」

「なんか、その…顔を合わせづらくて…いろいろ考えないようにしてただけで…」

津軽は気まずそうに、手で顔を隠す。

「………みっともない姿を…」

鈴子は、津軽が涙を見せた日のことを思い出した。
目を閉じる。

「さあ、なんのこと?私、目閉じてたから 知らない」

津軽の視線は彼女を追う。

「知らないけど、今更何か気にするの変。ダメなとこなんていっぱい見てるもの」

「そうなの?」

地味にショックを受ける、津軽。

「そうなの!」

「……そう…」

「でも」
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津軽の煮え切らない反応に、鈴子は唇を尖らせる。

「何、その反応。そういう返し?」

津軽の頬が少し染まる。

「そう、一足飛びに来られると、私の立場がないなぁ」

観念したように、言葉を選ぶ。

「まあ、そういうところ含めて―――…」
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ゆっくりと、2人の距離が縮まる。

重なった手と、唇から――
少し高くなってる、津軽の体温が伝わった。



Comments
1ヵ月長かった…
待ちに待った連載再開!

平賀さん、鈴子のこと結構好きだったのですね。
あまり、表情や行動に感情が出ない人なので、分かりませんでしたが…

鈴子の表情や言葉から気持ちを汲み取って行動するところ、紳士だなと思いました。
そして、倉田さんも同じように大人の魅力が光っていました。
春時もそうだけど、メランコリアに出てくる男性陣は、素敵な人が多い気がします。


そして、長かった…
津軽と鈴子がようやく両想いに!

割とあっさりしていた印象ですが、何とも2人らしい告白だったように思います。
鈴ちゃんが一気に飛び越えちゃうところとか。
彼女に先越されて、津軽がちょっと張り合ったように「もっと好きだけど」って返すところとか。
津軽は、もう鈴ちゃんには一生敵わないだろうなと思います。笑

色々あったけれど、想いが通じ合って本当に良かった。
次号からは、幸せそうな姿をたくさん見たいです!


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