※ネタバレ・画バレを含みますので、閲覧にはご注意ください

Story
タラレバ女 (Kiss 2017年2月号掲載分)

北伊豆の長閑な田舎町
タラレバ言っていたら、こんな場所まで来てしまった。
女友達のおせっかいって、何歳まで続くんだろう。


いちいち、群れてんじゃねーよ
訊きたいことあんなら、一人で来いブス

…って顔をしている…!

迎えに来た倫子を、にらみつけるKEY。
しかし、彼の口から出たのは謝罪の言葉だった。

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周りのおじさま達が口々に盛り上がる。

「いやあ、びっくりしたよ。こんな大スターが、浜で酔って寝ちゃってるんだもん」

「でも、おかげでまたこうやって、皆さんに会えて、KEYくんには感謝だな~」

「こちらのお嬢さんは初めてだよね?」

「あ、ハイ。マミと申します。今日はお姉さま方のドライバーとして、お供で来ました。先程、伺ったんですけど、なにやら近くに美味しい磯料理の店があるそうで…」

マミはタラレバ娘を振り返る。

「小雪さん、香さん!我々は先にそのお店、行きましょ!」

「えっ、待ってよ、まだ何も…」

「ハイハイ、あとは2人が話せばいいことですから」

「えっ、でも私たちがいた方が倫子も話しやすい…」

倫子は、慌てて香の服を掴む。

「えっ、うそ、待ってどこ行くの。あたしも行く…」
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KEYはその様子を、無言で窺う。

「待って待って、マジで待って」

慌てる倫子。

「てゆーか、マミちゃんが、まず説明してよ。あたしは無理やり、連れてこられただけだって…」

「無理やり?」

静観していたKEYが、突っ込んだ。

「えっ」

「無理やりって何だ」

マミちゃんは、すかさず撤退するように仕向ける。

「ハイ、始まった。ってことで、あとはお2人に任せましょう、ねっ」

「え…見届けたい…」

小雪たちの反応に、あきれるマミ。

「アホでしょ。年上相手にすみませんね、言いますね。アホか」
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マミは小雪、香を必死に食い止める。

「この2匹の妖怪は私に任せて…2人でゆっくり話せるところに逃げてください!」


しばらくして、
KEYと倫子は海辺にいた。
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「どこまで聞いた?」

「……あ…えっと…」

返答に困る、倫子。

「いいさ、仕事に穴あけたのオレだし」

浜風が、KEYのきれいな金髪を揺らす。

「社長も、心配でアンタたちに助けを求めたんだろうし、それに…あんたたちが食いつきそうな話だって、分かってたしな」

倫子の表情が揺れる。
何を言っているんだ…この男は

「あんたらが好きそうな、昼メロみたいなお涙頂戴バナシ。いや、昔の少女漫画かな?図星だろ?」

「っ……」

倫子はバッと手を振り上げた。
しかし、そのまま空中で止まる。

「何、ぶつ気?」

瞳に、うっすら涙がこみ上げる。
KEYは気付かないふりをして、さらに畳みかけた。

「ぶてないくせに、ポーズでそういうことするのって、ださいよ」

言葉は発さず、グッと手を握りしめる。
どんどん涙がこみ上げる。

「お、グーになった」

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「あたしたちは、バカで幼稚な中学生軍団かもしれないけど、人の死を面白がるような、人間じゃない」

KEYは少しの間の後、一番聞きたかったことを問いかけた。

「じゃあ、何で来た。こんなところまで」

倫子は涙をこぼしながら、
握りしめる手に、力を込めた。

「殴ってから言っていい?」

「何で」

「………答えが…答えがNOだったとき、殴ったせいだって思えるか…」

彼の頬めがけて、力いっぱい拳を突き出した。
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KEYは勢いのまま体勢を崩した彼女の手首を、ぎゅっと掴んだ。
倫子は下を向いたまま。

「あんた、あたしのこと好きなの?」


どれくらい、時間が経ったかわからない。
緩やかな波の音が、やけに長く聞こえる。


「……なんで黙るのよ…黙るってことは…それは…」

手首は掴まれたまま、お互い力を込めたまま。

「嫌いだって、言わないってことは………じゃあ、そういうことなのかもしれないって、思っちゃうでしょう?」

ようやく、彼は手を離した。

「違う、オレは…もう人を好きになったりはしない」

倫子も、やっと顔を上げた。

「………ハッ、何その陳腐なセリフ。それこそ、昔の少女漫画だよ。あたしだったら、そんなセリフは書かないわ。そんな、つまんないセリフはあたしの脚本には、出てこない」

感情のリミットが振り切れた。

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「物書きとして言わせてもらえれば、"たられば"っていうのは、そもそも本来は…過去のことを、ああしてたらよかった。こうしてればよかったって、ぐずぐず後悔する時に使うのよ」

KEYの表情が大きく揺れた。

「だから、本当のタラレバはあんたのほうよ!見えるでしょう!?あんたにも!見えるはずよ、空見上げてみなさいよ」

倫子はバッと立ち上がり、海辺の空を指さした。

「ほら、見えるでしょう!?」

彼は指に導かれるように、空を見上げる。
そこには、倫子がいつもいつも見てきたタラレバの姿が。

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「このタラレバ男!!」

彼に立ち直って欲しいのか、前に進んで欲しいのか…倫子には分からなかった。
ただただ、彼の心に届くよう、
力いっぱいに叫んだ。

彼を一人残して、海辺の街道を全力で走る。
息が切れてきた頃、倫子の携帯が鳴った。

立ち止まり、LINEを開く

そこには早坂さんからのメッセージ

"すき焼きの準備できたよー"

"土鍋ですき焼きっておかしいかな"

"大丈夫だよね"

倫子はメッセージを打とうとして、自分の手がひどく震えていることに気がついた。
なんて打とうとしてるの…私…

"ごめんなさい"

震えて思うように打てない

"香が"

"急に体調悪くなって"

"今、病院なんだけど、今日戻れないかも"


女は息を吐くように、嘘をつく

この歳になれば、もはや嘘をつくことに
何の良心も痛まない

指一本で大事な人に嘘をつきながら
今、こうして足を止めて…
心のどこかで、あいつが追いかけて来るのを期待している

ねぇ、タラレバ 教えてよ

私は一体どうしたいのか

倫子の瞳から、とめどなく涙がこぼれる
波の音も聞こえない

お願い

私を追いかけてきて

追いかけてこないで…


早坂さんからの返事が返って来たと同時に、背後に気配を感じた

「おい」

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まだ、携帯は鳴り続けている。
でも彼から目が離せない。

彼はスッと倫子に手を伸ばす。

「そんなものがあるから、あんたは…あんたたちは…」

鳴りやまない倫子の携帯を、力いっぱい掴んだ。
取り上げようとするも、倫子は離さない。

「やめ…」

そのまま、グイと彼女ごと引き寄せた。

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手にしていた携帯が、ゆっくりと落下し、
乾いた音を立てて、地面に転がった。
画面も割れて、もう鳴らない。

彼女は息もつくことなく、ただ唇で彼を受け止め続けた。

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自ら求めるように、彼の肩口に手を伸ばす。

ねぇ タラレバ教えてよ

私はやっと掴んだ幸せを
またこうして、ぶち壊して

もしかして私、幸せになりたくないのかな?

そもそも幸せって何なのかな?

ようやく唇が離れると、彼は彼女の手を引いた。
導かれるようにたどり着いた錆びれた船の中で、彼女を押し倒す。

ねぇ、言ってよタラレバ
いや、言ってよタラレバ男

私はあんたのことを…
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本当に好きになっても いいの?

彼の性急な触れ合いに、息を切らしながらも
倫子の瞳からは、涙がこぼれ続けた。

1度目はただの勢い
ただの一夜の過ち

それが、本当の恋かどうかは、2度目でわかる



Comments
もうダメだ、号泣です。
間違いなく名場面です。

倫子の想いが苦しい、そしてツライ…
本当に何が幸せなんでしょう。答えがあればいいのに。

想いが通じるはずの幸せな場面が、こんなに切ないなんて…こういうストーリー描けるって本当にすごい。
近づいたようで、何ひとつ分かってないこの状況。2人はどうやって進んでいくのでしょう。

「タラレバ男!」ってセリフ、見事でした。
名付け親が一番、後悔ばかりしているタラレバだったのですね。。
全体的に切なすぎる。

そして、マミちゃん、本当いい子…
あんな子が後輩にいたら、嬉しい…

この回は、ぜひマンガ読んでみて下さい。


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