※ネタバレ・画バレを含みますので、閲覧にはご注意ください

(花とゆめ 2017年3号掲載)

やあ諸君、ごきげんよう
おれは冥府の舟渡カロン

おれは今主人から逃げている

「出てこいカロン、どこにいるかはわかっている。お前には私の加護が付いているのだから。自分でもわかっているだろう?」

ハデスは雑多に物が置かれている倉庫で、辺りを見渡した。

わかってますとも、わかってるけど…
もしかしたら千に一つ、万に一つ今日は逃げ切れるかもなんて…!

ハデスはとある箱に手をかけて、蓋を開けた。
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「きゅうくつです」

「なら出てこい」

「・・・」

「出てこい」

「ハデス様、どーしても行くの?」

「ああ、今から私とお前は天界へ行く」

「~~~~~」

諸君、今日は百年に一度の恐ろしい日なのである。

少し前に天界のアポロンからハデスの元へ手紙が届いた。
そろそろカロンの定期メンテナンスの時期。
カロンの身体はツギハギでできているので、百年に一度アポロンが診ているのだった。

「はあ~~~~」

ユーウツだナ~たぶん百年前もごねてた気がする
忘れちゃったケド・・・

天界に出かける準備をしたハデスとカロンは、家来たちに挨拶をした。

「留守を頼む」

「かしこまりました」

「・・・もしコレットが来たら、悪いが今宵は戻りが遅いと伝えよ」

「御意。いってらっしゃいませ」

カロンは馬車の中で、ため息をついていた。

おれは天界が苦手なの
おれを呪った女神サマがいるから?
それもある・・・けどそれだけじゃなくて、なんてゆーか・・・

「カロン?」

「あいあいっ、もー乗っちゃったからだだこねやせんよ」

…しゃーない、がんばれおれ
ちっと我慢してメンテでもなんでも受けてやらあ


アポロン邸に着くと、柊が対応した。

「申し訳ございません。主は留守にしております」

「あらま」

「先ほど急にオリンポス十二神の会議に招集されまして」

「オリンポス十二神…そうか」
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あまり遅くはならないとのことで、ハデス達はアポロンの帰りを待つことにした。
お客様部屋への通り道、壺やら置物やらが大量に置かれている広間を通りかかった。

「オ?アポロン様引っ越しでもすんの?」

「あれはそのっ、主は収集癖が過ぎるので、定期的に不用品をフリーマーケットに出しておりまして・・・その仕分け作業をしております」

恥ずかしそうに頬を赤らめる、柊

「ねー柊、おれ仕分け手伝っていい?」

「えっ、しかしお客様にそんなこと」

「もう見ちゃったし、いいじゃんいいじゃん」
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「では恥を忍んで始めましょうか」

「うんうん、どー選別する?」

「まず9割方、処分します」

「!?」


2人で楽しく選別をしていると、楽器を見つけた。

「これなーに?」

「うくれれというらしいです」

「うくれれ」

カロンが引いてみると、ポロロンと可愛い音が出た。
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柊はもうひとつ楽器を取り出した。

「これも誰かが使ってくださいますかね」

カロンはハデスにその楽器を持っていった。

「弾けます?」

「なぜ私に」

「にあいそーと思って」

「この手の物は昔弾いたが、今はどうか」

冥府に楽器はないから、昔ってのは天界時代か・・・初めて聞いた・・・
ハデスは楽器を奏で始めた。
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見事な演奏に、カロンはこの上なく興奮する。
柊も頬を染めて、聞き入っている。



なんだよなんだよ
こんな特技あるんじゃん
なんで天界に置いてきちゃったのさ

・・・夜風にすうっと溶けてく このちょっと切ない音は
誰が弾いてもそう鳴るのでしょうか?

ううん、きっと違うね
おれは未だ
このひとの秘めたる魂に惹かれ続けている

「ご迷惑でなければ、冥王様受け取っていただけませんか?」

「そりゃいい、もらっちまいましょー ねね」

「・・・まあ、いいか」

カロンと柊は選別の続きに戻った。
柊は先ほどのハデスの様子を思い出した。

「・・・私は冥王様をよく存じ上げません。だから長らく怖い方だと思っていました。もちろん畏怖は今でもありますが・・・ですが家来を見れば主の質がわかる」

柊はカロンを見て、笑みをこぼした。

「冥王様は厳格かつお優しい方なのですね」

「そーなのそーなの、フフフ♡」

柊は着飾ったコレットを思い出して、頬を染めた。

”そしてあのコレットを乙女にしてしまうと・・・実に奥深い方ですね・・・!”

カロンは柊の言葉に嬉しさを隠せなかった。

おやさしーだって、フフン



・・・そうか、おれが天界が苦手な理由わかった
こんなに出来たうちの主なのに、冥府の神というだけで
オリンポス十二神から外されている

ハデス様の兄弟は全員十二神に入っているのに・・・
ハデス様はだめだって

おれはそれが気に食わないんだ


天界のオリンポス十二神会議

ハデスの弟、ゼウスが議題を読み上げる。

「えーと、次はヘスティアからの要望なんだけど、十二神の座をデュオニュソスに譲りたいと、そーなの?姉上」

「ええ、私は炉の神だから・・・静かに燃える暖炉やかまどの火のように慎ましく暮らしたいの・・・ディオは華のある子だから、適任なんじゃないかしらって」

「わらわは反対じゃ」

「ヘラちゃん、まだあの子と仲良くできないの?」

「できぬ、あれを神と認めてやっただけでも大事だった」

ゼウスは、商売の神ヘルメスにディオの居場所を尋ねた。

「あの子を探し出せるのは、君だけでしょ?」

「どこかで酔っぱらってるんじゃないですか?探せとおっしゃるならいくら払ってもらえます?」

「!?」

ヘルメスは突然そろばんをたたき出し、高額な請求書をゼウスに突き付けた。

「ヘスティアのままがいいな、ぼく!ねっ!姉上!」

「そっ、そうね、わたし頑張る・・・っ」
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「えっ」

一同がざわつく

「兄上は天界には住んでないけど、ならポセイドンだって海に住んでるし。最近はこっちとも交流あるし、何よりあれほどの優秀な神が蚊帳の外なのはどうかと思ってね」

そうさせたぼくが言うのはおかしいんだけどさ
でも、今なら言える

「ぼくは最高神として諸君の意見を求めたい」

オリンポス十二神に、冥王ハデスが加わったとしたら―――・・・


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ハデス様、みんなから愛されているな・・・
カロンは可愛くて、本当好きです。

オリンポス十二神に加わったら嬉しいけれど、
コレットとの距離が遠くならないか、少し心配です。

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