※ネタバレ・画バレを含みますので、閲覧にはご注意ください

(花とゆめ 2017年2号掲載)

ベテランのシン先生が、診療所を去ることになった。
それは、完全なる世代交代を意味していた。

「…イタン、君は二代目だ。私の陰に隠れていないで、どんと構えなさい」

「…はい」

「マリー、イタンを頼む」

「はい」

とうとう若い二代目イタンが最前線になった。
気合を入れねば…
マリーは気を引き締めた。

「ユリヤが隣街の診療所に?」

「…私が行くとね、女性の患者さんが喜んでくれるの。あそこの薬師は男の人しかいないから。でも、やっぱり断ろうかな。ランちゃんもコレットも先生たちも出てっちゃったし、私まで出たら2人も大変よね」

ユリヤは少し申し訳なさそうに言った。
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味方がどんどん去っていく。
でもイタンは平気みたい。
どんと構えるってやつ?そつのない男だわ

いつも通りやっていくしかない

「ただいまー」

往診から戻って来たイタンは途中で買い食いしたため、夕飯いらないと言う。

「めずらしいね、買い食いなんて」

「往診途中で腹減ってさー」

突然、患者がやってきていつも通り、笑顔で対応するイタン
マリーはその様子をみて、微笑む。

うん、いつも通り

その日から、イタンは買い食いすることが多くなった。

「えっ、今日も買い食いですか?」

「ごめんごめん」

マリーは気付く。
おかしい。
いくらなんでも、何かおかしい。
イタンらしくない。

マリーは食事を抜け出して、イタンの部屋をガラッと開けた。
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「イタン!」

「お前…ノックとかしろよ」

「具合悪いの?どこが痛い?」

「疲れて寝てただけだよ」

イタンはいつもの飄々とした笑顔でマリーに尋ねた。

「何?何か用あった?」

「…もしかして、買い食いって嘘?ほんとは何も食べられないんじゃない?」

「はは、そんなわけ…」

マリーはイタンの肩をガシッと掴み、声を荒げた。

「私にだけは先生面しないでよ・・・っ」

悔しくて、歯を食いしばるマリー

「………」

イタンはマリーの表情に吸い寄せられるように、彼女の肩に顔をうずめた。
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「ずっと考えてるんだ。俺この家守れなかったらどうしようって。二代目が潰すなんてよくある話じゃん。俺の中で先生は大きすぎるんだ…」

イタン…どんなに腕がよくて、人当たりもよくて飄々としていても、怖くて怖くて仕方なかったんだね…
マリーはイタンを抱きしめた。

気付けなかった、イタンごめん…
この家を受け継いだのは、彼
だから…

「私はイタンが感じているプレッシャーを肩代わりできない。できない…けど」
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昔からそうしてきたように。

「胃痛のお茶淹れてくるね、みんなには内緒で」

「うん…」


それから、少し経って、イタンの体調はみるみる回復していった。
夜、縁側でマリーと2人、リンゴを頬張るイタン。

「だいぶ食べられるようになったね」

「んまい。ごちそーさん」

「よくできました」

「やーまじでヤバかったなー俺。やっぱ体は正直なんだな、勉強になったわ」

イタンは隣のマリーに向かって微笑んだ

「…マリー、ありがとな。マリーがいてよかった」
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「ずっと、側にいる」

「家族だから?」

「………」

イタンは無言で、そっとマリーの手に自分の手を重ねた。

きっと少し、ちがう気持ち
だけどまだお互い言わない

この家の事もう大丈夫って、思える日まで…
例えばそうね、家を空けて旅に出られるくらい、足元が落ち着く日まで。

「ふふっ、釣りでも山菜とりでも好きなだけやってこい」

そうして、それが叶ったときは…

マリーはコレットが預かって来た、イタンからの手紙を開いた。
そこには、こうつづられていた。


―――マリー、結婚しよう



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手紙でプロポーズするあたり、イタン兄ちゃんらしいですね。
マリーとイタンの信頼関係ステキです。

コレットとハデスの関係もそろそろ進展してくれることを期待!

新刊は1/20発売だそうです!