※ネタバレ・画バレを含みますので、閲覧にはご注意ください

カラー扉
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来た道を (花とゆめ 2017年2号掲載)

牢獄の中で、ユンの叫び声が聞こえる。
目には涙が浮かぶ。

「ねえ、お願い!俺の鞄返して!仲間が怪我してるんだ。治療したいんだよ!お願い!お願いだから!!」

「うるさいです。静かにしてください」

現れたのはミザリ。
とっさにゼノを自分の背に隠す、ユン。
「近づかないで!またゼノを刺しに来たの!?」

「あなたが呼んだから来たのに、我儘ですね」

ミザリはにやりと笑みを浮かべた。

「あなた達の仲間がやって来ましたよ」

「えっ」

「驚きました。赤い髪の人はイル王の娘さんだったんですね」

「ヨナが自分で言ったの…?」

皆の表情が曇る。

「はい、それで戦を止めさせる為に、スウォン王と交渉すると言って出ていきました。あなた達を人質に置いてね。高華国が攻めて来たら、あなた方は殺されます。不死の人は拷問です。赤い髪のお姫様はたぶん戻って来ませんよ。あなた達はどちらにしろ、殺されるんです。」

「俺たちは人質なんだろ?」

ゼノが会話に割って入った。

「人質は今死んだら、人質にならない。白龍と緑龍は俺と違って不死身じゃねぇんだ。だからボウズの鞄と水と食い物を持ってきてくれよ」

「また生き返るとこ見せてくれます?」

「いくらでも見せてやるから」

「わかりました!持ってきます」

ミザリはニヤッと笑うと、嬉々として駆けて行った。
ユンはゼノに抗議の声をあげる。
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ジェハは額から血を流しながら、遠くを見つめた。2016-12-22-00-35-50
ふと、ゼノはシンアの気配が変わったことに気がついた。

「どした?青龍」

「ゼノ…町中で俺が一瞬能力を使おうとした時、止めた…?」

「青龍の能力はまだ知られてないから、使わない方がいい」

「俺は使う」

か細い声だが、はっきりとシンアは告げた。

「ヨナや…みんなが傷つけられるのなら、使う。誰が相手でも」
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「そしてみんなで、娘さんのとこに帰ろうな」


高華国へ向けて、歩みを進めるヨナ一向。

「姫さん、少し休まねぇと」

「でも…っ早くしないと戦が…みんなが…」

ヴォルドやアルギラも、ヨナを心配する。

「ヨナ様、無茶です。真国を出て、一睡もされず歩き詰めなんですから」

「そーだぜ、ヨにゃん。ちょっと休んだ方が効率いいって」

ヨにゃん…とハクは心の中でつぶやく。

と、突然ヨナの息が荒くなった。
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「……」

ヴォルドは苦しそうにもがく彼女の様子を見て、表情をゆがめる。

この人は、まだ16の少女だ
仲間と高華国と真国の民の命が、何も持たないこの少女の肩にかかっている
それはどれ程の恐怖か

ヨナの瞳からポロポロ涙がこぼれる。
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小さな身体は限界を迎えていた。

天幕で横になるヨナ。
どこか遠いところを見つめている。

「―――あいつらは大丈夫ですよ。俺は暗黒龍なんでね。あいつらがピンピンしてるってわかるんです」

「暗黒龍?四龍なのに?」

「先週から五龍になったんです」

くすくす笑うヨナ。

「…だから安心して今は休んでください。何かしてほしい事とか、持ってきてほしいものとかありますか?」

「……………アオ」

「……………………………ぷっきゅー」

迷った末にぷっきゅーになりきったハク。

「可愛くない」

一刀両断するヨナ。

「アオはね、いつも私の肩口で寝るの」

ハクがヨナの肩口にうずくまった。

「アオでかい」

ヨナはふふっとほほ笑みながら、ハクの頭をなでる。

「よしよし、ねんねねんね」

「…あのな、姫さん…」

「よしよし…」

ヨナの手に少し力が籠る。

「…………………お前も」
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「ねんね、ねんね…」

優しい彼女の笑顔にハクは胸が詰まった。
こんなにボロボロになってもなお、自分を包み込んでくれるのだ。

愛しい。
ハクはたまらず、思い切りヨナを抱きしめた。
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「……きです」

小さな言葉は、ヨナの耳に届く前に、闇に消えていった。

「……ハク?なに…?」

「………何でもありません。もう…寝てください」

ハクはヨナを離すと、反対側を向き目を閉じた。
ヨナは彼のぬくもりを名残惜しむように、彼の背へ手を伸ばしぎゅっと服と握った。
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翌朝、目を覚ますとハクの姿はなかった。
ハクがいない…

天幕を出ると、探していたその人は食事の準備をしていた。

「おはようございます、姫さん。よく眠れました?」

「………うん、すっきりした」

まだ、ぼんやりする。
夢の中でハクに大事なことを、言われた気がした。


朝食を取っている最中、アルギラが切り出した。
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「緋龍城に殴りこむか?」

「喧嘩売ってどうする、アホギラ」

「一つだけ…当てがあるんだけど…」

ヨナは大切な友人のことを思い出した。
水の部族領へ向かう。

「えっ、リリがいない?」

「はい、リリ様はジュンキ将軍のご命令で、アユラ殿・テトラ殿とお出かけになり、もう数週間戻っておられません」

「そう…」

当てにしていたリリがいない。

「他にいねぇの?」

「ハク様あなたの里やご家族は?」

「……俺は長老に名を返した。何より王に関わる問題で里の手は借りられない」

「じゃ、やっぱ城に殴りこむか」

アルギラはやっぱり殴り込みたいらしい。

「…私の知人が何とかしてくれるかもしれません」

ヴォルドはアルギラを無視して話をつづけた。

「知人といっても定期的に情報収集をする取引相手ですが…」

「えっ、お前、高華国にそんな知り合いいたの?」

「タオ姫から高華国を調べろとご指示があったのだ。何度も偵察についてこいと言っただろうが」

「まさか、真国の人に助けてもらうなんて…」

「いや、まだ助けになるかどうかは…でも我々では不足かもしれませんが、どうか使ってください」

ヨナに頭を下げる、ヴォルドとアルギラ。

「ありがとう」


情報屋に接触したヴォルドが戻って来た。

「今日は幸運ですよ。頭が来ているそうです。空都や緋龍城の様子がわかるかもしれません」

ヨナ一向はその情報屋に会うため、ヴォルドについていく。
人気のない通路を通り、薄暗い部屋へと通された。

「お久しぶりです」

情報屋の男が振り返った。
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「待て」

情報屋の腕をがっしり掴む、ハク。

「俺を知ってるな?」

「……いや、初めて見る顔だ…」

情報屋は振り返らない。

「……じゃあ、ウォンという男を知ってるか?」

「…よくある名前だからなぁ…どいつのことやら…」

情報屋の首筋に汗がしたたり落ちる。

「昔…一緒に姫さんを探してくれたよな?忘れちまったのかよ?オギさん」

苦笑いで、ハクへと視線を移す。

「…目つきの悪さは変わらねぇな。高華の雷獣、ハク」


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うおおお。ヨナぁぁ。
彼女の背負っているものを考えるだけで、胸が苦しいです。
そんな状況でも、笑顔でいられる彼女は本当に強い。

たまらず抱きしめたハクの気持ちが、痛いほど伝わってきました。
あと少し言葉にならなかった想い…言葉として届かなくてもヨナに何か伝わったのではないかな。

ゼノはやはり長年生きているだけあって、こういう時ホント頼りになりますね。
ヨナの側にいられないなんて、四龍達も悔しい思いをしているのだろうな。

そして、オギさんが出てくるとは!
彼がキーパーソンだったのですね。
オギさん伝いにスウォンと会うのでしょうか。

また、リリが不在だったのも少し気になる。
次回は番外編とのこと。本編は一か月後かな。
待ち遠しい。


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