※ネタバレ・画バレを含みますので、閲覧にはご注意ください
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「ほっとけないから 来たんだ」 

告白(椿町ロンリープラネット 5巻収録)

父親の借金返済のために、小説家・暁の家で住み込み家政婦をしている、女子高生・大野ふみ。
ふみは暁と一緒に生活するなかで、どんどん彼に惹かれていく。

でも、暁にはそんな素振りもない…先生からしたら私はひどく子供だろう。
この気持ちは打ち明けてはならないと、押し隠していた。

とある休日、暁の幼馴染の悟郎が家へとやって来た。

「一緒にお祭り行かない?花火もあるしきっと楽しいよ。」

ふみを強引に連れ出そうとする、悟郎。
暁はその様子を怖い表情で眺めながら、自分も執筆のために祭りの資料が欲しいと言って、
3人で出かけることになった。


「わあ!屋台がいっぱい!」

貧乏な生活をしてきたふみは、あまり祭りに来たことがなかった。
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縁日を思い切り楽しむ3人。
久々の楽しい経験に、ふみも暁も笑顔が絶えない。

暁が射的の景品用に袋を取りに離れた時、
悟郎がふみに笑いかけた。

「良かったね、暁とお祭り来れて」

「え…」

「ごまかさなくて大丈夫だよ。好きなんでしょ?暁のこと」

「!!!」

ふみはずばり言い当てられて、思わず真っ赤になる。

「あの!このこと先生には言わないでくださいね!」

「ははは、分かってるって。安心して、俺は協力者だから。個人的にね、ふみちゃんと暁がうまくいってくれると嬉しいっつーか…アイツとは中学から一緒なんだけど…」
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ふみは悟郎の表情に、胸があたたかくなる。

「いい友達ですね。でも、残念ながら脈はあまりなさそうです。」

少しうつむき、照れた表情で話す、ふみ。
両想いどころか…気持ちを口に出すことすらないかもしれない。

「…そう?けっこういいところまで行ってると思うよ?」

「ハハハ、そんなことないですよ」


暁も戻って来て、そろそろ花火の時間になろうとしていた。
突然、悟郎があからさまに大きな声を出す。

「あーーー!ごめん俺この後大事な用事があるんだった」

「大事な用?」

「そ!どーしても抜けられないんだよね。てことで花火は2人で見てきてよ」

悟郎は去り際にふみを見ると、ウィンクして合図した。
頬を赤らめる、ふみ。
気を利かせてくれたんだ…

「全く勝手なやつだ。…仕方ない2人で見るか」

「―――はい」

お祭りの熱にあてられて、何だか今夜は少しだけ奇跡を期待してしまう。

花火会場に入る、暁とふみ。
カップルが多い中で、微妙な距離感をあけて立っている2人。
暁が口を開いた。

「今日楽しかったか?」

「あ、はい!とっても!」

「―――好きな奴とは一緒にいかなくていいのか?」

「…えっ…あ~、その人忙しくて」

暁はふみに好きな人がいると、知っていた。
それが自分だとは夢にも思っていない。

「どんな奴なんだ、そいつ」

「え、え~と」

ふみは少し躊躇しながらも、正直に気持ちを話す。
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「すごく面倒見もいいし、愛情深くて、間違ったことは叱ってくれて…人には言えないことも、何故かその人の前では素直になれて、その人の何気ないことが1つ1つ小さく積もって…」

ふみの表情から幸せが溢れ出す。

「こうやって、幸せってできていくんだなって」

暁はその表情に吸い込まれるように、彼女を見ていた。
ふと、視線を下に落とす。

「そうか…じゃあ来年はそいつと来られたらいいな」

それは暁先生です…その言葉は声にならなかった。
ふみは精一杯の笑顔を見せて答えた。

「―――そうですね」

花火開始のアナウンスが流れる。
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意図せず暁の手に触れたふみは、驚いて手を引っ込める。

「ひ、人が増えてきましたね!」

気まずい雰囲気を打ち砕こうとするも、余計不自然な空気が流れてしまった。
ふみに味方するように、大きな花火があがる。

混雑のせいで、先ほどより距離が近づく2人。
暁の頭に、先ほど見たふみの幸せそうな表情が浮かんだ。
あの表情を引き出したのは、名も知らぬ他の男…

花火…
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暁の大きな手が、ふみに近づく。
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ふみは驚いて、視線を暁に移す。
手はぎこちなく、でもしっかりと握られている。


「ほっとけないから…」
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暁は静かに花火へと向き直った。
ふみがどんな表情をしているかは確認せずに。

ずるい…
なんで…そんなこと…こんなタイミングで…ずるい

目に涙が浮かぶ。
ふみの感情のリミッターが完全に振り切れた。

「…私の――な人は」

花火の音にかき消されて、暁の耳にはっきりと届かない。
でも、彼はふみの方を見た。

「――私が好きなのは、先生です。」
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この告白シーン、とても好きです。
本当にドキドキした。
間の取り方とか、2人の距離感とか…表現が素晴らしいです。
純粋でまっすぐなふみと、大人で不器用な暁のキャラクターが存分に生きている。
ほっとけない…とかイケメンに言われてみたい笑。

ぜひ、マンガで読んでいただきたいシーンです。