※ネタバレ・画バレを含みますので、閲覧にはご注意ください!!

絡まる心 (BELOVE 2016年22号掲載)

「しょうがないなぁ、春時兄様は」

鈴子は笑顔で春時を見上げた。
彼女の手の甲からしたたり落ちる、真っ赤な血。

2016-11-01-00-25-58
春時が自分を刺そうとしたナイフは、それを庇った鈴子の手に刺さっていた。

「大丈夫、そんなに深くないよ」

「大丈夫なわけあるか!早く…手を!」

春時はハンカチで鈴子の止血をした。

「っつ…兄様はずっとそうだよね」

その呼び名から、春時は鈴子の記憶が戻っていることに気がつく。

「一緒に背負うって言った過去をいつまでも一人背負って…私は少しも恨んでないし許してるのに…もう7年も前、兄様兵役のこと覚えている?あれは嘘だったんだよね?3年もの間、離れて何をしてたの?そんなに一緒にいるのが辛かった?私といるといつまでも昔のこと思い出すから?」

「違う!そうじゃない…おまえは悪くない。ただ…俺なんかのために……」

鈴子はその言葉に反応し、彼女の手のひらが春時の頬を打った。
パンっと乾いた音が鳴り響く。

「す…鈴…」

「なんかなんて言わないで」

鈴子の目には涙がたまっている。
2016-11-01-00-36-31
春時はつぶやいた。

「兵役と偽った3年の間、変わろうとした…」

幸せな日々を置いて、孤独に身を寄せて、
償うとはどういうことか、肉親を許せるのか、自分を許せるのか
殺めた肉親への嫌悪を抱えたまま、祈った

いつか鈴子をまっすぐ見られるように…何かを願える人間になりたい
変わりたい

春時は鈴子が書いた七夕の短冊をみてそう思った。
兄様の願いが叶いますように、と書かれた短冊をいつまでも見つめていた。

「おまえのためにと思っても…たかが3年で変われるものではなかったな…」

ひなの手下に銃を突き付けられたまま、津軽が答えた。

「そりゃあ他人のためになんて思ってるうちは駄目だよ。本当はそうじゃないって自覚しなきゃ。まあ、そもそも君はそんなに罪の意識を感じる必要はないと思うけどね。憎んでよかったんだから。」

ひなは津軽の言葉に笑って反応した。

「ふ…津軽はいつだって正しい。でもだめだなぁ…心がないもの」

ひなのつくり笑いが凍る。

「そうだ、いっそ津軽が選んでみる?私津軽になら殺されてあげてもいいよ。一生忘れない私にして。あ、もちろん鈴子ちゃんが選んでもいいよ。より好きなほうの命を奪うと幸せになれる」

鈴子はズカズカひなに近づくと、手を振り上げた。
2016-11-01-00-29-16
鈴子は声を荒らげる。

「あなたは神様じゃないんだから、何もかもわかったような口をきかないで!めんどうなこと他人に何かを押し付けないで!」

鈴子は落ちていたナイフを拾い、ひなに差し出した。

「もうどうしてもこの話を続けるなら、自分の責任で自分の思いで、あなたが自分の手を汚すべきなんだ!!」

ひなは鈴子からナイフを受け取ると、そのまま鈴子に向けた。
2016-11-01-00-39-59

「兄様、津軽さん心配しないで。黙って殺されたりしない。相手が女の人なら大丈夫だから」

「私…負けそうね…でも私は心を殺すことができる。鈴子ちゃんに負けるのは嫌」

ひなの周りの空気がより一層冷たくなった。

「鈴子ちゃん春時君のことは思い出したのね。でも津軽の事は思い出せない…ねぇ覚えてない?」

鈴子の瞳に猛火が映った。
そう…あの日…
2016-11-01-00-27-25
「歓声、暴徒、上がる炎…思い出せない?」

鈴子の頭がズキズキ痛み出した。
ひなの瞳が化け物のように開かれる。

「教えてあげたよね…もう一度聞きたい?」

ズキン
ズキン

やめて…聞きたくない
鈴子は頭を抱えてうずくまる。

思い出したくない…

鈴子の意志とは反して、あの日のひなとの会話がよみがえる。

異国でのことは…津軽がすべてなかったことにしてくれた。

幸せな幸せな鈴子ちゃん、なぁんにも知らないんだね。

津軽は私の頼みを断れない…だって…
2016-11-01-00-27-42
「あの人は私を殺してるの」


津軽が隙をついて手下を階段から突き落とし、うずくまった鈴子に駆け寄る。

「鈴!何があ・・・」

「いやっ」

鈴子は津軽の手を振り払う。目から涙が溢れでる。

津軽…津軽…
2016-11-01-00-28-15



*************************
おおおおおおおおい!津軽!
そりゃ鈴ちゃんショック受けるわ!

ひなの嘘かどうかは置いておいて、鈴子が津軽を思い出せなかった訳がようやくわかりました。
記憶を取り戻した鈴子はどうするんでしょう…
2人の行方が気になる…


最新刊第9巻 11/11新刊発売↓






第7巻 発売中!



第6巻 発売中!